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  • 執筆者の写真Tamai Erika

『ツイノスミカ』稽古場より2【熊川貴仁】 今作品について、「終の住処」について、座組について、ほかなんでも 



『ナミアゲハとツイノスミカ』

熊川貴仁


 皆さん、ナミアゲハ(世間一般で言うところのアゲハチョウ)はお好きですか?最近は虫嫌いな方も多いようですが、僕は大好きです。あのフォルムと言い、つぶらな瞳といい、とても愛おしい。

今の季節、徐々にナミアゲハが空を飛び始める頃なのですが、僕の住んでいる家でも元気に羽ばたいています。


 「ん?どういうこと?」と思ったそこのあなた!うん、正しい!正しい反応だと思います。僕の家のリビングには野放しのナミアゲハの幼虫達がいます。外敵も環境変化も気にする必要のない世界で、サンショウの苗の葉を気ままに食べています。大きく成長したその子達は、今度サナギになります。カーテンの裏やら壁やらフィギュアの側面やら、各々気に入ったところでサナギになります。何日かすると、羽化してお馴染みのフォルムになる訳です。その結果、家で元気にナミアゲハが飛び回るという光景が出来上がるんです。


 羽化したナミアゲハ達をずっと家に閉じ込めていては、僕らもナミアゲハ達も困るので、すぐ外にリリースします。この瞬間はやっぱり寂しいです。

その時、ふと思ったんです、あの子達には「ツイノスミカ」はあるのかなぁと。生き物である以上生きる場所(エサをとる場所など)はありますが、「最期はその場所がいい」と思うのは全生物共通なのでしょうか。僕は人間のことしか分かりません。もしナミアゲハ達も思うのなら、この家を選んでくれるといいなと思います。熊川でした。



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『やはらかな羽をもつ』

玉井江吏香

 ん?なんで蝶?と私も思いました(笑)。

 蝶と言えばすぐ思い出すのがこの句、


  つまみたる夏蝶トランプの厚さ 


 高柳克弘さんの句です。


 小さな情動が発見を生み、それが個の身体感覚として表れている、とても素敵な句。

 そしてこういうことを、舞台上でやれる人がいい役者だと私は思っていて、Unitoutの稽古は、基本これを目指しています。


 熊川貴仁、というひとは、普段は、よく笑うはにかみ屋の育ちの良さげな好青年、であるのですが、とても素直に、振れ幅も持ってこれ(小さな情動から発見を生みだし、それを個の身体感覚として表す)が出来る、いい役者です。


 彼の、蛹の背中を破り空へ広げつつある羽が、どうかのびやかにきれいなかたちで大きく広がりますように。高く高く。きっといつか。

 熊川君の「虫愛ずる姫君」はいつ現れるのかな、なんて思ったりしますが、や、「在るように在る」という意味では、熊川くんが「虫愛ずる姫君」なのかも。


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